闇
2010-05-10 20:27:40 (14 years ago)
Vol.75
「暗闇体験」がブームになっているというニュースを見ました。
ホテルのレストランで初対面の人達が同じテーブルに着き、アイマスクを付けてフルコースの食事をする。味覚や臭覚が敏感になり、また、見知らぬ人とも打ち解け易い、とアナウンサーが話していました。
都会のビルの中の人工的に作られた闇の中に公園があり、そこが自己啓発や会社の新人研修に使われていると言う。囲われた、安全な、空間の広がりのない闇。暗闇ごっこ。
大谷の地下空間の暗闇を思う。方向を見失えば地上に戻る手がかりは無い。その地下空間の行き止まりまでの三次元的に折れ曲がる長い道のり、広大な空間。
丑久保健一は一人で行き止まりまで行き、闇と対峙していた。
「はじめ闇は墨汁の感触でした。ドロリとした墨汁が、身体の穴という穴から進入して来て、恐怖を感じました。地下の闇に行く回数を重ねるうちに、暗闇のドロリとした感触の圧迫感が、サラリとした感触の黒い広がりに変化してきました。視覚は利きませんでしたが、気持ちは落ち着くようになりました。この闇の空間に週一・二度、時間にして一時間か二時間ぐらい居ました。このようなことは十年近く続きました。このような身体で感じる触覚体験と、採石場跡の大きな空間環境から作品が生まれました。」《丑久保健一展-連なる木-(下山芸術の森発電所美術館)カタログより》
(2010.5.10)